『四柱推命の謎と真実』波木星龍 八幡書店 (2015/6/18)
「東洋?四柱推命?うーんなんかすごいのはわかるけど、とにかく難しい。いっぱい流派があって、同じことを言うにもいろんな説があって、いったい何が、どれが、誰が正しいのかわからないよね」
四柱推命の勉強をはじめると必ずや湧き上がる気持ちや、勉強すればするほど謎が深まっていく数々の疑問に、かなりの部分で答えてくれて、四柱推命(および算命学)の曖昧な部分を、歴史の変遷や、理論から、めいっぱい説明し尽くしてくれる凄い本です。
ほとんどの推命学の本が、既存の四柱推命占いを肯定する側に立って、”既に完成された占術” として記されているのに、本書では、必ずしもそういう観点から記述されない部分もあるからです。(中略) おそらく皆さんも、さまざまな推命家に鑑定を受けられれば感じられると思いますが、四柱推命ほど占い師によって吉凶判断が大きく分かれる占術も少ないものです。
けれども、だからといって、巷に出回っているさまざまな「四柱推命」を、批判しようとする目的で書かれた本ではありません。日頃「四柱推命」を実践している立場の私が、永年の研究者・実占家なら誰もが感じるはずの疑問や問題点を正直に告白し、そもそもどのような “組み立ての占い” なのかを見つめ直し、いったんすべての “部品” をバラバラに戻して原点に立ち返り、「陰・陽」「五行」「十干・十二支」「蔵干」「月令」「通変」「神殺」「格局」「用神」のすべてを裸にして再構築しながら、どうすれば “個々の運命が本当に見えてくるのか” 、どうすれば “運命を根底から変えられるのか” 、改めて問い直そうとしているにすぎません。
そういう基礎的な検証が行われてこなかったことが、「四柱推命」に多くの誤解と錯覚を与えたのです。或る種、権威的な押し付けが「四柱推命」を複雑にし、抽象化し、理論倒れの占術への駆り立てていったのです。(p.16)
うわーーーー!凄いのキターーー!!!カッコイイ!
そうですよ。これだよ、これ。ずーっと私が知りたかったのは、こういうことなんだよ!!!大師匠の誰々先生のありがたいお言葉が云々とか、小難しくひねくりまわした技法とか、古典をさも我が言葉のように語る人生訓よりも、その占術そもそもの成り立ちの歴史と、理論の仕組みと変遷が知りたいんだよーーー。はぁはぁ…
静かに興奮しつつ、時間を忘れて読みふけりました。貸し出し不可の図書館だったので、自分用に購入しなければ。しかーし、いま(2015/10/14現在)アマゾンをはじめ、あちこちのネット本屋では在庫がない… 欲しい。ねっちり読みたい。。。(このあと購入しました!)
日本では、大きく分けて三系統の「四柱推命」が普及しています。
まず、主として「通変星」「十二運」「神殺」に基づく推命学で、どちらかというと明代(14世紀)までの中国で用いられた推命方式です。次に、「五行強弱」→「格局」→「用神」」へと進んでいく推命学で、明代以降の中華圏で広く用いられてきた推命方式です。そしてもうひとつは日本で「算命学」とよばれている推命学で、星の名称は違っているのですが、基本的には明代までの推命学と同系列の推命方式です。ただし、一般の推命学にはない “種々の技法” を備えていること、生年月日だけで “出生時刻を省いている” 点に特徴があります。(p.17)
算命学は、そもそも四柱推命と同じ理論に基づき、そこに独自の技法や解釈を加えた占術と思われます。少し勉強すれば誰でも気がつくことですが、「十大主星」=「通変星」であり、「十二大従星」=「十二運」です。ただ、その並べ方や解釈には、算命学独自の世界観が反映されています。
また、「通変+十二運型」ではなく、「五行強弱」→「格局」→「用神」型の四柱推命は、人生の波や時期を予測するのは得意でも、具体的な出来事を推測するのは苦手である、としばしば指摘されます。
個人的にも、その通りと思います。私は算命学だけでなく、格局→用神型の四柱推命を学んだ時に、算命学で看過されている重要な部分がいくつもあることがよくわかり、非常に美しい理論と感じました。命式全体のバランスを見る、という視点は大切なんだ、と。
しかし、実占では通変型の算命学的な占いのほうがお客様に伝わりやすいし、具体的にお客様が親しみを持って役立てていただきやすい、というのもまた事実です。
じゃあ、いったいどれが当たるの?どれが正しいの? そもそも干支暦なんて、架空の星を想定した暦でしょ?そもそもそれ自体が壮大なホラなんじゃないの?いやいや。焦らずもう少し丁寧に探っていきましょう。
本書では、最近では軽く扱われやすい(または無視されやすい)「神殺」の再評価も行われています。「神殺」もメインの有名どころはやっぱり当たる、と現場では感じられるので、このあたりももう少し仕組みを勉強しつつ検証してみたいところです。
さらに、「十二運」の有効性と理論的な問題点についても詳しく解説されています。個人的にはこれが最も今回最大に目からウロコぼろぼろ!!!のポイントでありました。
日本の「四柱推命」の “最大の弱点” は、日干の強弱を知るために「十二運」を用いてしまったことなのですが、その一方で、中華圏にはない “独自の判断方法” を産み出した点も見逃してはなりません。
その一つは「通変」とセットにしての “運命判断” であり、もう一つは「日干支」を基にした “性格判断” でした。ところが「通変」とセットにしての “運命判断” は、四柱八字としての “命式全体の組み合わせ” を無視することにつながりやすく、当然のことながら当たり外れが生じやすいのです。
「日干支」を基にした “性格判断” の方も、事実上、「月令」による “五段階の強弱” とか、「蔵干」から透出した “「通変」による性質” などを無視することになりやすく、偏りを生じやすい結果となりやすいものです。
そうそう!そうなんです!!!(コーフンしてきた…恥)
算命を看板に掲げつつも「命式の陽占ばっかり読んでると、そのひとの本質を見失うよ」と、わたしはときどき言うんですが、それって、まさにこの話なのです。(例えば、日干が土で、他もひたすら土ばっかりの陰占命式の方がいらっしゃるとします。陽占では、天印とか天堂がいっぱい出てきたら、このひとあんまり強い命式じゃないよね、なーんて読みがち。でもそれって、全体から見たらおおまつがい!!!でしょ?!)
十二運=十二大従星の的中率は悪くないと思うけれど、それでも説明がつかず、判断に困るケースは少なくありません。わたしはそもそも、十二運の仕組みには無理があるのではないか?(特に土行の扱い)と思って、その仕組みに長らく納得がいかず、算命学における身強・身弱の分類にもいろいろと疑問を抱いていました。本書の記述は、それらの数々の謎が解消される、非常に役立つ内容でありました。
さらには、流派によって多数異なる「蔵干」についての解説もあるのです。「蔵干」!!!そうです。萌える。あの魑魅魍魎の世界っ。このあたりもじっくり時間をとって比較検討してみるつもりです。
ときどき「本やサイトによって、私の中心星が違うんですが、どうしてですか?」といったご質問をいただくわけですが、それは流派によって「蔵干」というカレンダーの目盛りが違うからです。(つまり、算命学の「陽占」の星は、必ずしも絶対、ではなくて、蔵干の取り方によっては異なる可能性がある)
ということで、まるっきり初心者の方には難しすぎてお勧めできない内容ですが、ある程度以上勉強されている方には、あちこち役立つ、刺さる、感じることが多いであろう書籍です。
版元の八幡書房HP
第1章 東洋占術の最高峰「四柱推命」の仮面
● あなたは「四柱推命」占いを知っていますか?
● あなたの知らない「もう一つの四柱推命」
● 殷王朝の呪術思想が形になった「生れ日」判断
● 最初は「生年干支」主体の占いだった
●「四柱推命」が現在の形になったのは17世紀
● 古典の推命原書は矛盾していて当然
第2章 封印された陰陽・五行の謎と真実
● 陰陽・五行思想は、どのように成立していったか
●「陰」「陽」とは、「月」「太陽」の象徴化だった
●「五行」とは、「木星・火星・金星・水星・土星」の5星だった
● 年・月・日それぞれに存在する陰・陽の循環
●「相勝(相剋)」循環は、王朝が交替する法則
第3章 十干・十二支に潜む謎と真実
● 殷(商)王朝期の「十日」と、太初暦以降の「十幹」
● 太陽神霊としての「十日(十干)」の意味
●「太初暦」以降の「十幹(十干)」としての意味
● 新月と深く関わる「十二辰(十二支)」
● 殷(商)王朝「十二辰」に対する種々な見解
●「太初暦」以降の「十二枝」に対する種々な見解
●「太初暦」以降の「十二枝(十二支)」としての意味
コラム 命式の作成と、その基本構造の解説
Ⅰ 命式の作成 ――出生年月日時の干支転換――
Ⅱ 命式の基本構造 ――命式表記の仕方と構造論――
Ⅲ 推命考察の予備知識 ――運命判断の方法論――
第4章 研究者を迷路に迷い込む「蔵干」と「月令」の真実
● 古典の推命学原書に観られる「蔵干」の食い違い
●「蔵干」の源流にある〝エジプトの「占星術」〟と〝六壬の「24山方位」〟
● 十二支五行は三つの要素から成り立つ
●「月令五行」と「月支蔵干」の根本的違い
●「月令」がもたらす「得」「失」の五段階パワー
●「身強」と「身弱」を定める三つの基準
第5章 もう一つの「十干」と「十二支」がある
●「干合」は、どうして生じるのか
● 命式上の「干合」は〝五種類の作用〟に分かれる
●「支合」に潜んでいた西洋占星術の支配星
●「支冲」「支刑」「支害」と「天冲殺」の関係
第6章 「通変十星」の光と影
● 命式を観ただけで「通変」が判るようになったら一流
●「通変」十星が表している「光」と「影」
●「通変」それぞれが秘めている特有の現象
第7章 推命学最大の謎「格局」の真実
●「格局」の原点はインド・アラビアの占星学
● 現代推命学における「格局」の真意
●「特殊格局」の条件とその種類
●「一般格局」を定める法則の不可思議
●「出生日」と「出生月」による命式の「格局」
●「特殊格局」の〝生き方〟と〝幸運の掴み方〟
●「一般格局」それぞれの〝生き方〟と「優・劣」
第8章 「用神」と呼ばれるものの正体
● 古典原書からあった順序的な間違い
●「用神」を採択するための五種類の方法
●「特殊格局」と「専旺用神法」への疑問
●「調候用神」と、その実占的な用い方
●「用神」から読み取る〝幸運の鍵〟
第9章 「神殺」という名の占星術
●「七政四余」占星術と「紫微斗数」占星術からの使者
●「日干」を基に表出する「神殺」たち
●「月支」を基に表出する神殺と「年支」を基に表出する神殺
第10章 「旺衰十二運」の問題点と活用法
●「子平術」と「占星術」の違い
●「十二運」を実占上で活用する秘法
●「旺衰十二運」の具体的な意味と役割
●「十二運」のもう一つの判断法