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2017/09/08「家」制度と「家族」のかたち

突然ですが、ご自身にはご兄弟・姉妹はいらっしゃいますか?お子さんがいる方でしたら、何人いらっしゃいますか?わたしの父は8人兄弟の下から2番目、祖父に至っては十何人も兄弟がいたらしいです。ずいぶん多くて、子沢山で表彰された、という話も聞いたような気がします。もっともお家や環境によって、家族構成はケースバイケースです。すでに90歳を超える方々から、様々な事情の中ひとり娘として育ったお話や、他の方からは夫が亡くなったあとその兄弟に嫁いだというお話を伺ったこともあります。東洋的な「家」に直結するテーマとして、「嫁」「後継者」「兄弟姉妹」にまつわる分野では、まさに想像を絶するようなお話もたくさん伺いました。

先日は「自立した個人同士のパートナーシップを求めている→そういう相手と結婚したい→算命学で結婚運の鑑定を」というご相談があり「東洋の伝統的な結婚の解釈は個人ではなく『家』が中心だから、古典的な算命学の解釈だけではご希望に沿う形でお答えするのは難しいですよ」とお話する機会がありました。そこからご相談者様のご要望やお考えに応じてどのようにお話を展開するのかは、単に占いの知識や技法だけでなく「家族」や「パートナーシップ」についての占い師個人の見識が深く問われるように思います。日々頭をひねって、あちこちから試され続ける毎日です。

『きょうだいリスク』平山亮・古川雅子(朝日新書)第2章リスクの背景にある「きょうだい格差」p67 〜ひきこもりの弟、結婚しない姉、非正規の妹、親の財産を浪費する兄、非婚化や雇用の不安定化により、自立できず頼る家族もない「きょうだい」が増えている。少子化も進む中、自分の子どもが家族内で唯一の次世代というケースも多いだろう〜リアルな現状分析と未来への示唆に富む記述が多い良書。

「戦後体制家族」と社会学で提案された概念では、1955年から75年あたりに家族を作った人達がその主な担い手で、お勤めに出て稼いで家族を扶養するお父さんと主婦(+パートタイム労働)のお母さんがいて、子どもは2人か3人の家族が平均的な姿なのだそうです。それ以前は家族総出の農業や自営業で生計を立てている家族が多く、全員が生計を立てるための働き手であることがほとんどで、「戦後体制家族」の形はせいぜい50年程度の歴史です。いったい「ふつう」とはいったいなんなのか?「正しい家族」の姿を類型化することなどできるのか?さまざまな疑問が浮かびます。

治療の場では身体のことだけに限らず、さまざまなご家族の形について伺う機会は多く、結果的にご家族メンバーをひとりずつ拝見させていただくことも多々ありました。さらに占いの現場でも、たくさんのご家族鑑定をさせていただきながら改めて、お家や家族の形は、地域や環境や文化、それぞれの考え方や生き方によってさまざまだと感じます。

肉体的な特徴や形質の遺伝は当然ありますし、ご自分にとっては自明のこととして感じられるであろう「ふつう」や「正しい」も、多くの場合には育った環境やご家族由来です。好むと好まざるに関わらず、ご自分のルーツを振りかえって考えてみる、いちど冷静に客観視してみる機会を設けるのは悪いことではないでしょう。

話は飛びますが、算命学を少し専門的に学ぶとおそらく突き当たるであろう疑問のひとつは、頻発する「養子に出す」というフレーズや概念です。だんだん学んでいるうちに、養子に出すといい星、後継者になると良くない生まれ、といった内容がはっきり出てきます。昔は確かに、息子が3人いたら家督を継ぐことのない次男や三男が養子に出されたり、跡取りがいない家が養子をもらうといったことは、そんなに珍しいケースではなかったと思われます。養子の慣行は「家」の存続には合理的なシステムですし、幕末頃では、庶民の家のおよそ2割、武士の家では4割近くが養子を跡取りにしていたというデータがあるそうです。

それにしても、伝統的な解釈や慣行を元にした解釈をそのまま現代に当てはめることができるのか?昔の解釈や技法は、どうやったら現代人にも役立てて、伝わるようになるのか?日々心を砕き、頭をフル回転させる毎日です。(天海玉紀)


* 現代のリアルな「家族」を考えるにあたって、オススメの参考書籍


そもそも「吉凶」とはなんなのか?にはじまり、「伝統的な東アジアの世界観」についての雑感いろいろ。東洋占術を扱うにあたっては、歴史や文化の背景についての理解は欠かせません。

東洋占における「吉凶」を調舒星的キレ芸で語る

儒教的な「女性の立場」についての雑感。このあたりのテーマには、あれこれ言いたいことが山ほどあるので、これからまたもっと儒教について勉強してから、しつこくしつこく書き続けます。

2016/11/11 三従七去