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2017/11/03 「落ち込むこと」の効能

先日「土星-メランコリー」というテーマでの、占星術と臨床心理学のコラボ講座(鏡リュウジ先生&東畑開人先生)を聴講してきました。土星が象徴する暗さや重さという性質が歴史的にどのように捉えられてどのような意味をもつかを俯瞰したうえで、現代では軽視されがちな「落ち込む」ことの重要性についての再考を促されるという、たいへん有意義な時間を過ごしてきました。

2017年の冬至図。冬至点で太陽と土星が重なります。ここからの1年を象徴するような大変印象深い図です。

土星とは古来より鉛、錬金術では黒化の象徴です。あらゆる不幸、恐れ、貧困、老化、陰鬱で暗くて重くてつまらない象徴であると言われてきました。良い点をあげるなら、たゆまぬ繰り返しの努力によって初めて永続的に自分の血肉とできること、つまり「努力」の大切さを教えてくれる、ことでしょう。〜占星術をきちんと学べば、土星は暗くて怖くて恐ろしいだけのものではなく、厳しい先生のような存在だということが次第にわかってきます。それでもやっぱり土星はたいへん。土星のもたらすお宝は、楽して簡単に手に入るものではありません。

しかし現代では「最短最速☆で、最大最高!の効果を出す」ことが求められ、常にポジティブに明るく前向きに(軽い躁状態で!)好感度高く、テキパキと効率的に課題をこなす有能な人間であることを求められる状況があります。いまの世の中には余裕がなく、じっくり時間をかけて何かに向き合ったり、失敗を繰り返して成長する、という過程が許容されなくなっているとも言えます。むき出しの自分自身が「価値を生む人間」であるかどうかを常に問われるシビアな世界です。〜という分析はまさに、自分がそこでまさにぶち当たってもがいている壁そのままで、聞けば聞くほど胸がキリキリ痛みます。

「キラキラ自己実現以前に、まず生き残ることがだいじ」という気分は、だいぶ前から感じていましたが、わたしの脳内はずっと暗いです…私もうそろそろ本当にダウン、本当にダメかもしれないなぁ…と日々ぼやいています。それでも、いや、でも、人間的な成熟には失敗や落ち込み、黒くて暗い時期を経る時間が必要だと言われれば、それは確かにそうです。陰があっての陽、光があれば影がある。だからこうやって落ち込むことにも意味があるのか…最短最速で素晴らしいものだけが手に入る最高の人生!というのは、私にはどうやらご縁がなさそうです。あははは^^

すべては「市場」になり(就活市場、婚活市場のような)、あらゆることが「コスパ(コストパフォーマンス)」で測られる時代です。占いの現場では、多くの人の「世の中に適応する大変さ」と「生き辛さ」について、日々向かい合っているといっても過言ではありませんから、世の中や運気の流れと無縁ではいられません。来年以降の流れは、全体にさらに内向きで保守的な傾向が強まると予想されますし、そこにうまくはまれる人、はまれない人では大きく違いが出てくるだろうとも考えています。

ちなみにこの日の土星講座の聴講は、ちょうど甘夏弦先生と一緒だったので、終わってすぐに感想や考えをお互いに話し合うこともできて、一石二鳥!で、ますますよかったです。ひとりの力でダメなことでも、誰かと、周りと力を合わせて、という突破口は世の中にいろいろありますね。(天海玉紀)