心理療法を学ぶときには、基本の基本としてまず「治療構造」つまり「枠」について教えられます。セラピストとクライアントは、それぞれの立場を確認し、治療目的を設定し、セッションの場所、回数、頻度、料金、時間などについて決めます。もうちょっと柔らかく言えば「曜日や時間帯を定める=気が向いたときにだけ来るのはNG」「始まる時間と終わる時間を守る=きょうはもうちょっと話したい気分であっても、終了時間がきたら終わりにしなければならない」「お互いの役割と立場を明らかにして、尊重する=セラピストがきょうは嫌なことがあったから私の話聞いてよね、みたいなことはしてはダメです」というようなことです。
「枠」には大いに意味と効能があります。「この枠の中でなら、自由です」という保証をするためです。お互いにそのまま素の人間同士が接するのではなく、役割と場という「枠」があることによって、セラピストもクライアントも守られるという側面もあります。
おそらく、誰かを騙したりするような危険な類の勧誘、各種の営業やナンパの類は、たいていこの「枠」や対人関係の距離感をわざわざ壊していくようなテクニックを使うでしょう。よく考えてみると、友人や恋人、家族といった自然な人間関係のあり方に比べると「枠」を通じた関係は不自然で不自由な形です。人間の気持ちや、人間関係は、もっと予測不能で複雑で流動的ですから、いきなり訪ねて行ったり、真夜中に電話をしたくなるとか、急に会いたい気分ではなくなったり、きょうはなんだかそういうノリじゃないんだ、そんなことも当然あるでしょう。それなのに、なぜわざわざ不自由とも言えるような「枠」を設定するのでしょうか。
鍼灸治療の修行中も、心理療法を学んだときも、時間の枠を守ることと、患者さん(クライアントさん)との距離感を保つことについて、私はかなり厳しく躾けられました。ごくシンプルなことですが、例えば「規定の営業時間内にお越しください」「その日は定休日なのでお引き受けできません」とお断りせざるを得ない状況はよくあります。それを堅苦しくて面倒だと感じたことは、最初の頃は特に幾度ともなくありました。強くごねられるならいっそ引き受けてしまった方が楽!な場合もあるのです。
しかしながら、だんだん経験が増えていくにつれて「わたしはご要望にお応えできかねますので、どうか他をお探しください」「それは当方では規定外なので無理です」などと申し上げることが、自分を守るだけでなく、結果的に患者さん、お客様を守ることにもつながると思うようになりました。(ときには枠を外すこともありますが、これはかなり慎重に行う例外中の例外です)
土星は「境界の守護者」と呼ばれます。堅苦しくて杓子定規なローカルルールの体現者である土星は、土星外天体(トランスサタニアン=天王星、海王星、冥王星)的な巨大な影響力(人間の小さな力では太刀打ち出来ない!)から、私たちを守ってくれている存在、とも考えられます。土星の制限は保護でもあり、規則や規範は日常の安全弁となります。なんだかきょうはいつもに増していちだんと堅苦しくてつまらない話ですね。はい。ここしばらくわたしはずっと「土星」のことを考えているからです。先日、甘夏弦さんの「カルミックインプリント」のモニターセッションを受けたのです。(レポはこちら→★)
とはいえ、長い人生の中である一定の「枠」の保護や意味は絶対なのかといえば、そうともいえないです。ある「枠」の意味や効能は、その時と場合による、としかいえません。土星は単なる特定の世代や、一定のある地域でしか通用しないような「ローカルルール」にすぎないともいえるからです。
そもそも自分の「枠」が強すぎて自分の境界が強すぎる人は良くも悪くもまわりの人や出来事を跳ね返すでしょうし、自分の「枠」がなさすぎる(弱すぎる)人は良くも悪くも外から来るいろんな人や出来事にどんどん侵食されるでしょう。ご自分の「枠」はどうなっているだろうか?プロ活動をなさっている方ならご自身の営業状況の「枠」はどうだろうか?ときどき「壁」や「枠」の点検をしてみるのも悪くないでしょう。(天海玉紀)
◎ 土星の心理学的な解釈については「サターン 土星の心理占星学」→★ という名著があります。わたしはこれを読んで感銘を受けたのが、西洋占星術の勉強を始めたきっかけのひとつです。
◎ もうちょっと具体的に身近な例で勉強したいかたにはこちらがおススメ!「運命が変わる土星占い(まついなつき)」
お勉強中の方、ご興味ある方にはぜひお勧めです。